障害理解をもとに災害リスクにレジリエントな地域づくりを 社会福祉法人仙台市障害者福祉協会 会長 阿部一彦 図1 障害福祉サービス利用(18〜64歳)や一般就労の状況 全障害者 障害者人口324万人、サービス利用者数72.2万人(22.3%)、※一般就労者数63.1万人 身体障害者 障害者人口111万人、サービス利用者数20.4万人(18.4%)、一般就労者数43.3万人 知的障害者 障害者人口41万人、サービス利用者数34.4万人(83.9%)、一般就労者数15.0万人 精神障害者 障害者人口172万人、サービス利用者数15.6万人(9.1%)、一般就労者数4.8万人 ※常用労働者5人以上を雇用する民間事業所の状況 障害者の就労形態としては、一般就労以外にも自営や障害者福祉サービスでの就労がある。 震災時、障害者福祉サービスを利用していなかった人々、 地域とつながっていなかった人々が情報不足などで不安な生活を送った ↓ 障害福祉サービスを利用している人々にも、 利用していない人々にとっても暮らしやすい地域づくりが大切 地域とつながることが大切 図2 東日本大震災の障害者の生活困難調査 (災害対応に関する検証ワークショップ) どのようなことに困り、どのような支援が求められるか『受援力』 ワークショップを経て量的調査 東日本大震災5年にあたって ○およそ35年に一度発災している宮城県沖地震→大規模地震に対する危機感 ○研修会の開催、備蓄品の準備、災害時要援護者マニュアルの策定、 総合防災訓練への参加、福祉避難所に関する検討、災害時障害者ボランティアの養成等、防災・減災に関する取り組み等(平成17年頃から)→振り返り、さらに検討、充実へ ○震災後、JDF支援センターはじめ様々な支援団体の支援活動→つながり、 支え合いのありがたさと重要性を実感、地域でもつながり、 支え合うことの重要性を強く認識 ○福祉サービス利用者や障害者団体会員等は、必要な情報を得、 人的・物質的支援など つながりの少ない多数の障害者は大きな困難(図1) →障害当事者団体の大きな役割の再認識 ○障害当事者団体のワークショップ(図2)等の取り組み、ヒアリング、 量的調査等の展開 防災世界会議、福祉大会、地域団体の研修会等での発信、講演等の発信事業の展開 障害及び障害者理解の促進のため、障害の社会モデルの浸透、障害者の定義の理解 ○障害関係者だけでの取り組みには限界 →さらに多くの障害当事者、地域住民の輪を広げる必要 →障害及び障害者理解の促進が必須 障害者差別解消法は大きなツール(武器)、差別禁止条例はさらに強力なツール(武器 条例づくりの必要性は震災前から指摘されていたが、震災を契機に大きな動き 「仙台市障害を理由とする差別をなくし 障害のある人もない人もともに暮らしやすいまちをつくる条例」 (市議会で審議中、平成28年4月施行予定) 東日本大震災の復興と、今後の防災に関わる課題(当面の課題・中期的課題) ○どこともつながらない障害者が多数(図1)→大きな困難に直面、震災前も困難な生活、その後の復興感も低い傾向→震災によって顕在化した課題の解決に向けた活動 ○障害理解が不十分なために、避難所生活等で大きな困難→障害理解の促進活動 ○地域防災会議などへの参画、 防災・減災への取り組みの中で発信することが重要 地域の諸計画策定のための審議会などへの参画、提言等 非常時(災害時)の対応は平時の対応の延長 ○仙台市では同意に基づいた災害時要援護者情報をもとに、 平成24年12月から町内会や 自主防災組織等が避難支援体制づくり→障害理解の促進(当事者団体の役割) 地域の人々や組織を巻き込んだ活動を行うのが、障害当事者団体の役割 障害分野から見た今後の自然災害の備えへの提言 ○障害当事者団体も防災・減災についての知識・技術について習熟し、 地域で提言・発信 ○地震、津波だけではなく、豪雨による水害など→各災害に対応した自分自身の行動 ○自宅にいることだけではなく、職場、外出中、 県外などにいた場合など→一人一人が、常日頃からどのようなときに、 どのように対応するのかを考えておく必要 ○多くの障害当事者団体とともに活動、困難な体験は『受援力』を発揮する原動力 →災害時要援護者マニュアルの改訂作業、作業自体も大きな意義 ○震災前に山形県身障協会との災害時相互応援協定→日身連東北・北海道ブロックの相互応援協定締結→日身連加入団体間での支援協定・ネットワークの検討、 加盟団体の取り組みについて情報の共有と提供、それぞれの地域における発信力 ○今後危惧される災害に対して、障害理解を図りながら、 防災・減災に向けた意識啓発を当事者(団体)から発信していくことが重要 ○仙台防災枠組2015-2030 (国連防災世界会議、平成27年3月) ○会議の成果を生かした防災環境都市づくり、仙台市防災環境都市推進室開設 (平成27年4月)→障害者の視点をしっかりとり込んだ地域づくりへ ○非常時(災害時)の対応のためにも、平時の暮らしやすいまちづくりがたいせつ ○障害者保健福祉計画、障害福祉計画等の諸計画策定に障害者の視点から参画、提言 ○障害理解を踏まえた配慮のたいせつさ(合理的配慮)、 環境整備の重要性を多くの人々に周知→障害者差別解消法、仙台市条例 (平成28年4月施行)を大きなツールに 『社会の中で、不便なこと、 困ったことに直面することの多い障害当事者からの発信により、 誰もが暮らしやすい地域づくり』 『私たちのことは私たち抜きに決めないで!』